花橘の袖の香の
みめうるはしきをとめごは
真昼に夢を見てしより
さめて忘るゝ夜のならひ
白日の夢のなぞもかく
忘れがたくはありけるものか
ゆめと知りせばなまなかに
さめざらましを世に出でて
うらわかぐさのうらわかみ
何をか夢の名残ぞと
問はゞ答へん目さめては
熱き涙のかわく間もなし
花橘の袖の香の
みめうるはしきをとめごは
真昼に夢を見てしより
さめて忘るゝ夜のならひ
白日の夢のなぞもかく
忘れがたくはありけるものか
ゆめと知りせばなまなかに
さめざらましを世に出でて
うらわかぐさのうらわかみ
何をか夢の名残ぞと
問はゞ答へん目さめては
熱き涙のかわく間もなし
をとこの気息のやはらかき
お夏の髪にかゝるとき
をとこの早きためいきの
霰のごとくはしるとき
をとこの熱き手の掌の
お夏の手にも触るゝとき
をとこの涙ながれいで
お夏の袖にかゝるとき
をとこの黒き目のいろの
お夏の胸に映るとき
をとこの紅き口唇の
お夏の口にもゆるとき
人こそしらね嗚呼恋の
ふたりの身より流れいで
げにこがるれど慕へども
やむときもなき清十郎
髪を洗へば紫の
小草のまへに色みえて
足をあぐれば花鳥の
われに随ふ風情あり
目にながむれば彩雲の
まきてはひらく絵巻物
手にとる酒は美酒の
若き愁をたゝふめり
耳をたつれば歌神の
きたりて玉の簫を吹き
口をひらけばうたびとの
一ふしわれはこひうたふ
あゝかくまでにあやしくも
熱きこゝろのわれなれど
われをし君のこひしたふ
その涙にはおよばじな