それとなく
その由るところ悲しまる、
元日の午後の眠たき心。
Author Archives: 石川啄木
[it-k047] 過ぎゆける一年のつかれ出しものか
過ぎゆける一年のつかれ出しものか、
元日といふに
うとうと眠し。
[it-k046] 何となく明日はよき事あるごとく
何となく明日はよき事あるごとく
思ふ心を
叱りて眠る。
[it-k045] 青塗の瀬戸の火鉢によりかかり
青塗の瀬戸の火鉢によりかかり、
眼閉ぢ、眼を開け、
時を惜めり。
[it-k044] ぢりぢりと
ぢりぢりと、
蝋燭の燃えつくるごとく、
夜となりたる大晦日かな。
[it-k043] いつまでか
いつまでか、
この見飽きたる懸額を
このまま懸けておくことやらむ。
[it-k042] 人がみな
人がみな
同じ方角に向いて行く。
それを横より見てゐる心。
[it-k029] 新しき明日の来るを信ずといふ
新しき明日の来るを信ずといふ
自分の言葉に
嘘はなけれど――
[it-k028] なつかしき
なつかしき
故郷にかへる思ひあり、
久し振りにて汽車に乗りしに。
[it-k027] 何がなく
何がなく
初恋人のおくつきに詣づるごとし。
郊外に来ぬ。