火をしたふ虫のごとくに
ともしびの明るき家に
かよひ慣れにき
Author Archives: 石川啄木
[it-i197] 忘れがたき人人 – 一 (96)
酔ひてわがうつむく時も
水ほしと眼ひらく時も
呼びし名なりけり
[it-i196] 忘れがたき人人 – 一 (95)
かなしきは
かの白玉のごとくなる腕に残せし
キスの痕かな
[it-i195] 忘れがたき人人 – 一 (94)
いかにせしと言へば
あをじろき酔ひざめの
面に強ひて笑みをつくりき
[it-i194] 忘れがたき人人 – 一 (93)
死ぬばかり我が酔ふをまちて
いろいろの
かなしきことを囁きし人
[it-i193] 忘れがたき人人 – 一 (92)
舞へといへば立ちて舞ひにき
おのづから
悪酒の酔ひにたふるるまでも
[it-i177] 忘れがたき人人 – 一 (76)
うたふごと駅の名呼びし
柔和なる
若き駅夫の眼をも忘れず
[it-i058] 煙 – 二 (11)
それとなく
郷里のことなど語り出でて
秋の夜に焼く餅のにほひかな
[it-i042] 煙 – 一 (42)
そのむかし秀才の名の高かりし
友牢にあり
秋のかぜ吹く
[it-i041] 煙 – 一 (41)
夢さめてふっと悲しむ
わが眠り
昔のごとく安からぬかな