死ぬばかり我が酔ふをまちて
いろいろの
かなしきことを囁きし人
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[it-i195] 忘れがたき人人 – 一 (94)
いかにせしと言へば
あをじろき酔ひざめの
面に強ひて笑みをつくりき
[it-i203] 忘れがたき人人 – 一 (102)
十年まへに作りしといふ漢詩を
酔へば唱へき
旅に老いし友
[it-i129] 忘れがたき人人 – 一 (28)
若くして
数人の父となりし友
子なきがごとく酔へばうたひき
[st-w41] 四 深林の逍遥、其他 – 合唱 一 暗香
はるのよはひかりはかりとおもひしを
しろきやうめのさかりなるらむ
姉
わかきいのちの
をしければ
やみにも春の
香に酔はん
せめてこよひは
さほひめよ
はなさくかげに
うたへかし
妹
そらもえへりや
はるのよは
ほしもかくれて
みえわかず
よめにもそれと
ほのしろく
みだれてにほふ
うめのはな
姉
はるのひかりの
こひしさに
かたちをかくす
うぐひすよ
はなさへしるき
はるのよの
やみをおそるゝ
ことなかれ
妹
うめをめぐりて
ゆくみづの
やみをながるゝ
せゝらぎや
ゆめもさそはぬ
香なりせば
いづれかよるに
にほはまし
姉
こぞのこよひは
わがともの
うすこうばいの
そめごろも
ほかげにうつる
さかづきを
こひのみえへる
よなりけり
妹
こぞのこよひは
わがともの
なみだをうつす
よのなごり
かげもかなしや
木下川に
うれひしづみし
よなりけり
姉
こぞのこよひは
わがともの
おもひははるの
よのゆめや
よをうきものに
いでたまふ
ひとめをつゝむ
よなりけり
妹
こぞのこよひは
わがともの
そでのかすみの
はなむしろ
ひくやことのね
たかじほを
うつしあはせし
よなりけり
姉
わがみぎのてに
くらぶれば
やさしきなれが
たなごころ
ふるればいとゞ
やはらかに
もゆるかあつく
おもほゆる
妹
もゆるやいかに
こよひはと
とひたまふこそ
うれしけれ
しりたまはずや
うめがかに
わがうまれてし
はるのよを
[st-w02] 一 秋の思 – 秋
秋は来ぬ
秋は来ぬ
一葉は花は露ありて
風の来て弾く琴の音に
青き葡萄は紫の
自然の酒とかはりけり
秋は来ぬ
秋は来ぬ
おくれさきだつ秋草も
みな夕霜のおきどころ
笑ひの酒を悲みの
杯にこそつぐべけれ
秋は来ぬ
秋は来ぬ
くさきも紅葉するものを
たれかは秋に酔はざらめ
智恵あり顔のさみしさに
君笛を吹けわれはうたはむ
[st-w28] 三 生のあけぼの – 五 うてや鼓
うてや鼓の春の音
雪にうもるゝ冬の日の
かなしき夢はとざされて
世は春の日とかはりけり
ひけばこぞめの春霞
かすみの幕をひきとじて
花と花とをぬふ糸は
けさもえいでしあをやなぎ
霞のまくをひきあけて
春をうかゞふことなかれ
はなさきにほふ蔭をこそ
春の台といふべけれ
小蝶よ花にたはぶれて
優しき夢をみては舞ひ
酔ふて羽袖もひら/\と
はるの姿をまひねかし
緑のはねのうぐひすよ
梅の花笠ぬひそへて
ゆめ静なるはるの日の
しらべを高く歌へかし