わが従兄
野山の猟に飽きし後
酒のみ家売り病みて死にしかな

おそらくは生涯妻をむかへじと
わらひし友よ
今もめとらず

いささかの銭借りてゆきし
わが友の
後姿の肩の雪かな

空知川雪に埋れて
鳥も見えず
岸辺の林に人ひとりゐき

三味線の絃のきれしを
火事のごと騒ぐ子ありき
大雪の夜に

石ひとつ
坂をくだるがごとくにも
我けふの日に到り着きたる

このごろは
母も時時ふるさとのことを言ひ出づ
秋に入れるなり

わがために
なやめる魂をしづめよと
讃美歌うたふ人ありしかな

むやむやと
口の中にてたふとげの事を呟く
乞食もありき

平手もて
吹雪にぬれし顔を拭く
友共産を主義とせりけり