敵として憎みし友と
やや長く手をば握りき
わかれといふに
Category Archives: 短歌
[it-i073] 煙 – 二 (26)
その名さへ忘られし頃
飄然とふるさとに来て
咳せし男
[it-k167] あてもなき金などを待つ思ひかな
あてもなき金などを待つ思ひかな。
寝つ起きつして、
今日も暮したり。
[it-i041] 煙 – 一 (41)
夢さめてふっと悲しむ
わが眠り
昔のごとく安からぬかな
[it-k179] ただ一人の
ただ一人の
をとこの子なる我はかく育てり。
父母もかなしかるらむ。
[it-k086] ドア推してひと足出れば
ドア推してひと足出れば、
病人の目にはてもなき
長廊下かな。
[it-k005] 遊びに出て子供かへらず
遊びに出て子供かへらず、
取り出して
走らせて見る玩具の機関車。
[it-k041] 世におこなひがたき事のみ考へる
世におこなひがたき事のみ考へる
われの頭よ!
今年もしかるか。
[it-k105] 病院に来て
病院に来て、
妻や子をいつくしむ
まことの我にかへりけるかな。
[it-k130] 閑古鳥
閑古鳥――
渋民村の山荘をめぐる林の
あかつきなつかし。