なつかしき冬の朝かな。
湯をのめば、
湯気がやはらかに、顔にかかれり。
Category Archives: 短歌
[it-k103] 思ふこと盗みきかるる如くにて
思ふこと盗みきかるる如くにて、
つと胸を引きぬ――
聴診器より。
[it-i105] 忘れがたき人人 – 一 (4)
函館の床屋の弟子を
おもひ出でぬ
耳剃らせるがこころよかりし
[it-i142] 忘れがたき人人 – 一 (41)
いささかの銭借りてゆきし
わが友の
後姿の肩の雪かな
[it-i070] 煙 – 二 (23)
うすのろの兄と
不具の父もてる三太はかなし
夜も書読む
[it-i051] 煙 – 二 (4)
亡くなれる師がその昔
たまひたる
地理の本など取りいでて見る
[it-k122] 胸いたみ
胸いたみ、
春の霙の降る日なり。
薬に噎せて、伏して眼をとづ。
[it-i011] 煙 – 一 (11)
夜寝ても口笛吹きぬ
口笛は
十五の我の歌にしありけり
[it-k083] 生れたといふ葉書みて
生れたといふ葉書みて、
ひとしきり、
顔をはれやかにしてゐたるかな。
[it-k058] 石狩の空知郡の
石狩の空知郡の
牧場のお嫁さんより送り来し
バタかな。