大川の水の面を見るごとに
郁雨よ
君のなやみを思ふ
[it-i124] 忘れがたき人人 – 一 (23)
演習のひまにわざわざ
汽車に乗りて
訪ひ来し友とのめる酒かな
[it-i123] 忘れがたき人人 – 一 (22)
巻煙草口にくはへて
浪あらき
磯の夜霧に立ちし女よ
[it-i122] 忘れがたき人人 – 一 (21)
とるに足らぬ男と思へと言ふごとく
山に入りにき
神のごとき友
[it-i121] 忘れがたき人人 – 一 (20)
むやむやと
口の中にてたふとげの事を呟く
乞食もありき
[it-i120] 忘れがたき人人 – 一 (19)
函館の臥牛の山の半腹の
碑の漢詩も
なかば忘れぬ
[it-i119] 忘れがたき人人 – 一 (18)
いくたびか死なむとしては
死なざりし
わが来しかたのをかしく悲し
[it-i118] 忘れがたき人人 – 一 (17)
漂泊の愁ひを叙して成らざりし
草稿の字の
読みがたさかな
[it-i117] 忘れがたき人人 – 一 (16)
朝な朝な
支那の俗歌をうたひ出づる
まくら時計を愛でしかなしみ
[it-i116] 忘れがたき人人 – 一 (15)
しらなみの寄せて騒げる
函館の大森浜に
思ひしことども