頬の寒き
流離の旅の人として
路問ふほどのこと言ひしのみ
Monthly Archives: 12月 1910
[it-i213] 忘れがたき人人 – 二 (1)
いつなりけむ
夢にふと聴きてうれしかりし
その声もあはれ長く聴かざり
[it-i212] 忘れがたき人人 – 一 (111)
浪淘沙
ながくも声をふるはせて
うたふがごとき旅なりしかな
[it-i211] 忘れがたき人人 – 一 (110)
わが室に女泣きしを
小説のなかの事かと
おもひ出づる日
[it-i210] 忘れがたき人人 – 一 (109)
よごれたる足袋穿く時の
気味わるき思ひに似たる
思出もあり
[it-i209] 忘れがたき人人 – 一 (108)
葡萄色の
古き手帳にのこりたる
かの会合の時と処かな
[it-i208] 忘れがたき人人 – 一 (107)
郷里にゐて
身投げせしことありといふ
女の三味にうたへるゆふべ
[it-i207] 忘れがたき人人 – 一 (106)
神のごと
遠く姿をあらはせる
阿寒の山の雪のあけぼの
[it-i206] 忘れがたき人人 – 一 (105)
三味線の絃のきれしを
火事のごと騒ぐ子ありき
大雪の夜に
[it-i205] 忘れがたき人人 – 一 (104)
波もなき二月の湾に
白塗の
外国船が低く浮かべり