吸ふごとに
鼻がぴたりと凍りつく
寒き空気を吸ひたくなりぬ
Monthly Archives: 12月 1910
[it-i203] 忘れがたき人人 – 一 (102)
十年まへに作りしといふ漢詩を
酔へば唱へき
旅に老いし友
[it-i202] 忘れがたき人人 – 一 (101)
死にしとかこのごろ聞きぬ
恋がたき
才あまりある男なりしが
[it-i201] 忘れがたき人人 – 一 (100)
さらさらと氷の屑が
波に鳴る
磯の月夜のゆきかへりかな
[it-i200] 忘れがたき人人 – 一 (99)
その膝に枕しつつも
我がこころ
思ひしはみな我のことなり
[it-i199] 忘れがたき人人 – 一 (98)
きしきしと寒さに踏めば板軋む
かへりの廊下の
不意のくちづけ
[it-i198] 忘れがたき人人 – 一 (97)
火をしたふ虫のごとくに
ともしびの明るき家に
かよひ慣れにき
[it-i197] 忘れがたき人人 – 一 (96)
酔ひてわがうつむく時も
水ほしと眼ひらく時も
呼びし名なりけり
[it-i196] 忘れがたき人人 – 一 (95)
かなしきは
かの白玉のごとくなる腕に残せし
キスの痕かな
[it-i195] 忘れがたき人人 – 一 (94)
いかにせしと言へば
あをじろき酔ひざめの
面に強ひて笑みをつくりき