閑古鳥――
渋民村の山荘をめぐる林の
あかつきなつかし。
Monthly Archives: 6月 1912
[it-k129] ふるさとを出でて五年
ふるさとを出でて五年、
病をえて、
かの閑古鳥を夢にきけるかな。
[it-k128] いま、夢に閑古鳥を聞けり
いま、夢に閑古鳥を聞けり。
閑古鳥を忘れざりしが
かなしくあるかな。
[it-k127] 氷嚢のとけて温めば
氷嚢のとけて温めば、
おのづから目がさめ来り、
からだ痛める。
[it-k126] たへがたき渇き覚ゆれど
たへがたき渇き覚ゆれど、
手をのべて
林檎とるだにものうき日かな。
[it-k125] 運命の来て乗れるかと
運命の来て乗れるかと
うたがひぬ――
蒲団の重き夜半の寝覚めに。
[it-k124] 子を叱る、あはれ、この心よ
子を叱る、あはれ、この心よ。
熱高き日の癖とのみ
妻よ、思ふな。
[it-k123] あたらしきサラドの色の
あたらしきサラドの色の
うれしさに、
箸をとりあげて見は見つれども――
[it-k122] 胸いたみ
胸いたみ、
春の霙の降る日なり。
薬に噎せて、伏して眼をとづ。
[it-k121] いつか是非、出さんと思ふ本のこと
いつか是非、出さんと思ふ本のこと、
表紙のことなど、
妻に語れる。