かの時に言ひそびれたる
大切の言葉は今も
胸にのこれど
Author Archives: 石川啄木
[it-i217] 忘れがたき人人 – 二 (5)
世の中の明るさのみを吸ふごとき
黒き瞳の
今も目にあり
[it-i216] 忘れがたき人人 – 二 (4)
ひややかに清き大理石に
春の日の静かに照るは
かかる思ひならむ
[it-i215] 忘れがたき人人 – 二 (3)
さりげなく言ひし言葉は
さりげなく君も聴きつらむ
それだけのこと
[it-i214] 忘れがたき人人 – 二 (2)
頬の寒き
流離の旅の人として
路問ふほどのこと言ひしのみ
[it-i213] 忘れがたき人人 – 二 (1)
いつなりけむ
夢にふと聴きてうれしかりし
その声もあはれ長く聴かざり
[it-i212] 忘れがたき人人 – 一 (111)
浪淘沙
ながくも声をふるはせて
うたふがごとき旅なりしかな
[it-i211] 忘れがたき人人 – 一 (110)
わが室に女泣きしを
小説のなかの事かと
おもひ出づる日
[it-i210] 忘れがたき人人 – 一 (109)
よごれたる足袋穿く時の
気味わるき思ひに似たる
思出もあり
[it-i209] 忘れがたき人人 – 一 (108)
葡萄色の
古き手帳にのこりたる
かの会合の時と処かな