夢さめてふっと悲しむ
わが眠り
昔のごとく安からぬかな
Category Archives: 一握の砂
[it-i042] 煙 – 一 (42)
そのむかし秀才の名の高かりし
友牢にあり
秋のかぜ吹く
[it-i043] 煙 – 一 (43)
近眼にて
おどけし歌をよみ出でし
茂雄の恋もかなしかりしか
[it-i044] 煙 – 一 (44)
わが妻のむかしの願ひ
音楽のことにかかりき
今はうたはず
[it-i045] 煙 – 一 (45)
友はみな或日四方に散り行きぬ
その後八年
名挙げしもなし
[it-i046] 煙 – 一 (46)
わが恋を
はじめて友にうち明けし夜のことなど
思ひ出づる日
[it-i047] 煙 – 一 (47)
糸切れし紙鳶のごとくに
若き日の心かろくも
とびさりしかな
[it-i048] 煙 – 二 (1)
ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
[it-i049] 煙 – 二 (2)
やまひある獣のごとき
わがこころ
ふるさとのこと聞けばおとなし
[it-i050] 煙 – 二 (3)
ふと思ふ
ふるさとにゐて日毎聴きし雀の鳴くを
三年聴かざり