亡くなれる師がその昔
たまひたる
地理の本など取りいでて見る
Category Archives: 一握の砂
[it-i052] 煙 – 二 (5)
その昔
小学校の柾屋根に我が投げし鞠
いかにかなりけむ
[it-i053] 煙 – 二 (6)
ふるさとの
かの路傍のすて石よ
今年も草に埋もれしらむ
[it-i054] 煙 – 二 (7)
わかれをれば妹いとしも
赤き緒の
下駄など欲しとわめく子なりし
[it-i055] 煙 – 二 (8)
二日前に山の絵見しが
今朝になりて
にはかに恋しふるさとの山
[it-i056] 煙 – 二 (9)
飴売のチャルメラ聴けば
うしなひし
をさなき心ひろへるごとし
[it-i057] 煙 – 二 (10)
このごろは
母も時時ふるさとのことを言ひ出づ
秋に入れるなり
[it-i058] 煙 – 二 (11)
それとなく
郷里のことなど語り出でて
秋の夜に焼く餅のにほひかな
[it-i059] 煙 – 二 (12)
かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川
[it-i060] 煙 – 二 (13)
田も畑も売りて酒のみ
ほろびゆくふるさと人に
心寄する日