我と共に
栗毛の仔馬走らせし
母の無き子の盗癖かな
Category Archives: 一握の砂
[it-i072] 煙 – 二 (25)
大形の被布の模様の赤き花
今も目に見ゆ
六歳の日の恋
[it-i073] 煙 – 二 (26)
その名さへ忘られし頃
飄然とふるさとに来て
咳せし男
[it-i074] 煙 – 二 (27)
意地悪の大工の子などもかなしかり
戦に出でしが
生きてかへらず
[it-i075] 煙 – 二 (28)
肺を病む
極道地主の総領の
よめとりの日の春の雷かな
[it-i076] 煙 – 二 (29)
宗次郎に
おかねが泣きて口説き居り
大根の花白きゆふぐれ
[it-i077] 煙 – 二 (30)
小心の役場の書記の
気の狂れし噂に立てる
ふるさとの秋
[it-i078] 煙 – 二 (31)
わが従兄
野山の猟に飽きし後
酒のみ家売り病みて死にしかな
[it-i079] 煙 – 二 (32)
我ゆきて手をとれば
泣きてしづまりき
酔ひて荒れしそのかみの友
[it-i080] 煙 – 二 (33)
酒のめば
刀をぬきて妻を逐ふ教師もありき
村を遂はれき