あはれかの我の教へし
子等もまた
やがてふるさとを棄てて出づるらむ
Category Archives: 一握の砂
[it-i062] 煙 – 二 (15)
ふるさとを出で来し子等の
相会ひて
よろこぶにまさるかなしみはなし
[it-i063] 煙 – 二 (16)
石をもて追はるるごとく
ふるさとを出でしかなしみ
消ゆる時なし
[it-i064] 煙 – 二 (17)
やはらかに柳あをめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けとごとくに
[it-i065] 煙 – 二 (18)
ふるさとの
村医の妻のつつましき櫛巻なども
なつかしきかな
[it-i066] 煙 – 二 (19)
かの村の登記所に来て
肺病みて
間もなく死にし男もありき
[it-i067] 煙 – 二 (20)
小学の首席を我と争ひし
友のいとなむ
木賃宿かな
[it-i068] 煙 – 二 (21)
千代治等も長じて恋し
子を挙げぬ
わが旅にしてなせしごとくに
[it-i069] 煙 – 二 (22)
ある年の盆の祭に
衣貸さむ踊れと言ひし
女を思ふ
[it-i070] 煙 – 二 (23)
うすのろの兄と
不具の父もてる三太はかなし
夜も書読む