漂泊の愁ひを叙して成らざりし
草稿の字の
読みがたさかな
Category Archives: 短歌
[it-k144] やや遠きものに思ひし
やや遠きものに思ひし
テロリストの悲しき心も――
近づく日のあり。
[it-k055] 家にかへる時間となるを
家にかへる時間となるを、
ただ一つの待つことにして、
今日も働けり。
[it-i027] 煙 – 一 (27)
解剖せし
蚯蚓のいのちもかなしかり
かの校庭の木柵の下
[it-i168] 忘れがたき人人 – 一 (67)
乗合の砲兵士官の
剣の鞘
がちゃりと鳴るに思ひやぶれき
[it-k186] 秋近し!
秋近し!
電燈の球のぬくもりの
さはれば指の皮膚に親しき。
[it-k032] 朝寝して新聞読む間なかりしを
朝寝して新聞読む間なかりしを
負債のごとく
今日も感ずる。
[it-i051] 煙 – 二 (4)
亡くなれる師がその昔
たまひたる
地理の本など取りいでて見る
[it-i114] 忘れがたき人人 – 一 (13)
ふるさとの
麦のかをりを懐かしむ
女の眉にこころひかれき
[it-i234] 忘れがたき人人 – 二 (22)
長き文
三年のうちに三度来ぬ
我の書きしは四度にかあらむ