雪のなか
処処に屋根見えて
煙突の煙うすくも空にまよへり
Category Archives: 短歌
[it-i086] 煙 – 二 (39)
閑古鳥
鳴く日となれば起るてふ
友のやまひのいかになりけむ
[it-k113] 氷嚢の下より
氷嚢の下より
まなこ光らせて、
寝られぬ夜は人をにくめる。
[it-k159] 新しきインクの匂ひ
新しきインクの匂ひ、
目に沁むもかなしや。
いつか庭の青めり。
[it-k012] 何となく
何となく、
今朝は少しく、わが心明るきごとし。
手の爪を切る。
何となく、
今年はよい事あるごとし。
元日の朝、晴れて風無し。
何となく、
案外に多き気もせらる、
自分と同じこと思ふ人。
何となく、
自分を嘘のかたまりの如く思ひて、
目をばつぶれる。
[it-k171] 胸いたむ日のかなしみも
胸いたむ日のかなしみも、
かをりよき煙草の如く、
棄てがたきかな。
[it-k092] 晴れし日のかなしみの一つ!
晴れし日のかなしみの一つ!
病室の窓にもたれて
煙草を味ふ。
[it-k077] この四五年
この四五年、
空を仰ぐといふことが一度もなかりき。
かうもなるものか?
[it-k127] 氷嚢のとけて温めば
氷嚢のとけて温めば、
おのづから目がさめ来り、
からだ痛める。
[it-k108] 軍人になると言ひ出して
軍人になると言ひ出して、
父母に
苦労させたる昔の我かな。