[st-w07] 一 秋の思 – 傘のうち

二人してさす一張の
傘に姿をつゝむとも
情の雨のふりしきり
かわく間もなきたもとかな

顔と顔とをうちよせて
あゆむとすればなつかしや
梅花の油黒髪の
乱れて匂ふ傘のうち

恋の一雨ぬれまさり
ぬれてこひしき夢の間や
染めてぞ燃ゆる紅絹うらの
雨になやめる足まとひ

歌ふをきけば梅川よ
しばし情を捨てよかし
いづこも恋に戯れて
それ忠兵衛の夢がたり

こひしき雨よふらばふれ
秋の入日の照りそひて
傘の涙を乾さぬ間に
手に手をとりて行きて帰らじ

[st-w02] 一 秋の思 – 秋

秋は来ぬ
秋は来ぬ
一葉は花は露ありて
風の来て弾く琴の音に
青き葡萄は紫の
自然の酒とかはりけり

秋は来ぬ
秋は来ぬ
おくれさきだつ秋草も
みな夕霜のおきどころ
笑ひの酒を悲みの
杯にこそつぐべけれ

秋は来ぬ
秋は来ぬ
くさきも紅葉するものを
たれかは秋に酔はざらめ
智恵あり顔のさみしさに
君笛を吹けわれはうたはむ