[st-w02] 一 秋の思 – 秋

秋は来ぬ
秋は来ぬ
一葉は花は露ありて
風の来て弾く琴の音に
青き葡萄は紫の
自然の酒とかはりけり

秋は来ぬ
秋は来ぬ
おくれさきだつ秋草も
みな夕霜のおきどころ
笑ひの酒を悲みの
杯にこそつぐべけれ

秋は来ぬ
秋は来ぬ
くさきも紅葉するものを
たれかは秋に酔はざらめ
智恵あり顔のさみしさに
君笛を吹けわれはうたはむ

[st-w14] 一 秋の思 – 強敵

一つの花に蝶と蜘蛛
小蜘蛛は花を守り顔
小蝶は花に酔ひ顔に
舞へども/\すべぞなき

花は小蜘蛛のためならば
小蝶の舞をいかにせむ
花は小蝶のためならば
小蜘蛛の糸をいかにせむ

やがて一つの花散りて
小蜘蛛はそこに眠れども
羽翼も軽き小蝶こそ
いづこともなくうせにけれ