真夜中の出窓に出でて、
欄干の霜に
手先を冷やしけるかな。
Monthly Archives: 6月 1912
[it-k019] すっきりと酔ひのさめたる心地よさよ!
すっきりと酔ひのさめたる心地よさよ!
夜中に起きて、
墨を磨るかな。
[it-k018] 何事か今我つぶやけり
何事か今我つぶやけり。
かく思ひ、
目をうちつぶり、酔ひを味ふ。
[it-k017] 今日もまた酒のめるかな!
今日もまた酒のめるかな!
酒のめば
胸のむかつく癖を知りつつ。
[it-k016] しっとりと
しっとりと
酒のかをりにひたりたる
脳の重みを感じて帰る。
[it-k015] 二晩おきに
二晩おきに、
夜の一時頃に切通の坂を上りしも――
勤めなればかな。
[it-k014] 途中にて乗換の電車なくなりしに
途中にて乗換の電車なくなりしに、
泣かうかと思ひき。
雨も降りてゐき。
[it-k013] うっとりと
うっとりと
本の挿絵に眺め入り、
煙草の煙吹きかけてみる。
[it-k012] 何となく
何となく、
今朝は少しく、わが心明るきごとし。
手の爪を切る。
何となく、
今年はよい事あるごとし。
元日の朝、晴れて風無し。
何となく、
案外に多き気もせらる、
自分と同じこと思ふ人。
何となく、
自分を嘘のかたまりの如く思ひて、
目をばつぶれる。
[it-k011] なつかしき冬の朝かな
なつかしき冬の朝かな。
湯をのめば、
湯気がやはらかに、顔にかかれり。