何事か今我つぶやけり。
かく思ひ、
目をうちつぶり、酔ひを味ふ。
Author Archives: 石川啄木
[it-k005] 遊びに出て子供かへらず
遊びに出て子供かへらず、
取り出して
走らせて見る玩具の機関車。
[it-k052] すっぽりと蒲団をかぶり
すっぽりと蒲団をかぶり、
足をちぢめ、
舌を出してみぬ、誰にともなしに。
[it-k099] びっしょりと寝汗出てゐる
びっしょりと寝汗出てゐる
あけがたの
まだ覚めやらぬ重きかなしみ。
[it-k086] ドア推してひと足出れば
ドア推してひと足出れば、
病人の目にはてもなき
長廊下かな。
[it-k085] 『石川はふびんな奴だ。』
『石川はふびんな奴だ。』
ときにかう自分で言ひて、
かなしみてみる。
[it-k084] そうれみろ
そうれみろ、
あの人も子をこしらへたと、
何か気の済む心地にて寝る。
[it-k083] 生れたといふ葉書みて
生れたといふ葉書みて、
ひとしきり、
顔をはれやかにしてゐたるかな。
[it-k082] 名は何と言ひけむ
名は何と言ひけむ。
姓は鈴木なりき。
今はどうして何処にゐるらむ。
[it-k081] 古手紙よ!
古手紙よ!
あの男とも、五年前は、
かほど親しく交はりしかな。