やみがたき用を忘れ来ぬ――
途中にて口に入れたる
ゼムのためなりし。

今日もまた酒のめるかな！
酒のめば
胸のむかつく癖を知りつつ。

猫を飼はば、
その猫がまた争ひの種となるらむ、
かなしきわが家。

いつしかに夏となれりけり。
やみあがりの目にこころよき
雨の明るさ！

氷嚢のとけて温めば、
おのづから目がさめ来り、
からだ痛める。

古手紙よ！
あの男とも、五年前は、
かほど親しく交はりしかな。

誰か我を
思ふ存分叱りつくる人あれと思ふ。
何の心ぞ。

咽喉がかわき、
まだ起きてゐる果物屋を探しに行きぬ。
秋の夜ふけに。

おとなしき家畜のごとき
心となる、
熱やや高き日のたよりなさ。

ひとところ、畳を見つめてありし間の
その思ひを、
妻よ、語れといふか。