今夜こそ思ふ存分泣いてみむと
泊りし宿屋の
茶のぬるさかな
Category Archives: 短歌
[it-k059] 外套の襟に頤を埋め
外套の襟に頤を埋め、
夜ふけに立どまりて聞く。
よく似た声かな。
[it-i132] 忘れがたき人人 – 一 (31)
雨に濡れし夜汽車の窓に
映りたる
山間の町のともしびの色
[it-k010] いつまでも歩いてゐねばならぬごとき
いつまでも歩いてゐねばならぬごとき
思ひ湧き来ぬ、
深夜の町町。
[it-i025] 煙 – 一 (25)
石ひとつ
坂をくだるがごとくにも
我けふの日に到り着きたる
[it-i074] 煙 – 二 (27)
意地悪の大工の子などもかなしかり
戦に出でしが
生きてかへらず
[it-i174] 忘れがたき人人 – 一 (73)
空知川雪に埋れて
鳥も見えず
岸辺の林に人ひとりゐき
[it-i193] 忘れがたき人人 – 一 (92)
舞へといへば立ちて舞ひにき
おのづから
悪酒の酔ひにたふるるまでも
[it-k020] 真夜中の出窓に出でて
真夜中の出窓に出でて、
欄干の霜に
手先を冷やしけるかな。
[it-k125] 運命の来て乗れるかと
運命の来て乗れるかと
うたがひぬ――
蒲団の重き夜半の寝覚めに。