かの旅の汽車の車掌が
ゆくりなくも
我が中学の友なりしかな

共同の薬屋開き
儲けむといふ友なりき
詐欺せしといふ

わが恋を
はじめて友にうち明けし夜のことなど
思ひ出づる日

演習のひまにわざわざ
汽車に乗りて
訪ひ来し友とのめる酒かな

師も友も知らで責めにき
謎に似る
わが学業のおこたりの因

敵として憎みし友と
やや長く手をば握りき
わかれといふに

小学の首席を我と争ひし
友のいとなむ
木賃宿かな

智慧とその深き慈悲とを
もちあぐみ
為すこともなく友は遊べり

その後に我を捨てし友も
あの頃は共に書読み
ともに遊びき

寂莫を敵とし友とし
雪のなかに
長き一生を送る人もあり