胸いたみ、
春の霙の降る日なり。
薬に噎せて、伏して眼をとづ。

やや遠きものに思ひし
テロリストの悲しき心も――
近づく日のあり。

医者の顔色をぢっと見し外に
何も見ざりき――
胸の痛み募る日。

ボロオヂンといふ露西亜名が、
何故ともなく、
幾度も思ひ出さるる日なり。

神様と議論して泣きし――
あの夢よ！
四日ばかりも前の朝なりし。

脉をとる看護婦の手の、
あたたかき日あり、
つめたく堅き日もあり。

晴れし日のかなしみの一つ！
病室の窓にもたれて
煙草を味ふ。

待てど待てど、
来る筈の人の来ぬ日なりき、
机の位置を此処に変へしは。

正月の四日になりて
あの人の
年に一度の葉書も来にけり。

ぢっとして寝ていらっしゃいと
子供にでもいふがごとくに
医者のいふ日かな。