晴れし空仰げばいつも
口笛を吹きたくなりて
吹きてあそびき

かなしみといはばいふべき
物の味
我の嘗めしはあまりに早かり

不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心

教室の窓より遁げて
ただ一人
かの城址に寝に行きしかな

師も友も知らで責めにき
謎に似る
わが学業のおこたりの因

ほとばしる喞筒の水の
心地よさよ
しばしは若きこころもて見る

かの旅の汽車の車掌が
ゆくりなくも
我が中学の友なりしかな

青空に消えゆく煙
さびしくも消えゆく煙
われにし似るか

己が名をほのかに呼びて
涙せし
十四の春にかへる術なし

城址の
石に腰掛け
禁制の木の実をひとり味ひしこと