大川の水の面を見るごとに
郁雨よ
君のなやみを思ふ
Category Archives: 短歌
[it-k140] 薬のむことを忘るるを
薬のむことを忘るるを、
それとなく、
たのしみに思ふ長病かな。
[it-i146] 忘れがたき人人 – 一 (45)
椅子をもて我を撃たむと身構へし
かの友の酔ひも
今は醒めつらむ
[it-k139] 新しきからだを欲しと思ひけり
新しきからだを欲しと思ひけり、
手術の傷の
痕を撫でつつ。
[it-i096] 煙 – 二 (49)
ふるさとに入りて先づ心傷むかな
道広くなり
橋もあたらし
[it-k170] ひさしぶりに
ひさしぶりに、
ふと声を出して笑ひてみぬ――
蝿の両手を揉むが可笑しさに。
[it-i040] 煙 – 一 (40)
見よげなる年賀の文を書く人と
おもひ過ぎにき
三年ばかりは
[it-i064] 煙 – 二 (17)
やはらかに柳あをめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けとごとくに
[it-i233] 忘れがたき人人 – 二 (21)
石狩の都の外の
君が家
林檎の花の散りてやあらむ
[it-k012] 何となく
何となく、
今朝は少しく、わが心明るきごとし。
手の爪を切る。
何となく、
今年はよい事あるごとし。
元日の朝、晴れて風無し。
何となく、
案外に多き気もせらる、
自分と同じこと思ふ人。
何となく、
自分を嘘のかたまりの如く思ひて、
目をばつぶれる。