春の雪みだれて降るを
熱のある目に
かなしくも眺め入りたる。
Category Archives: 短歌
[it-k119] 寝つつ読む本の重さに
寝つつ読む本の重さに
つかれたる
手を休めては、物を思へり。
[it-k083] 生れたといふ葉書みて
生れたといふ葉書みて、
ひとしきり、
顔をはれやかにしてゐたるかな。
[it-i054] 煙 – 二 (7)
わかれをれば妹いとしも
赤き緒の
下駄など欲しとわめく子なりし
[it-k139] 新しきからだを欲しと思ひけり
新しきからだを欲しと思ひけり、
手術の傷の
痕を撫でつつ。
[it-k061] 百姓の多くは酒をやめしといふ
百姓の多くは酒をやめしといふ。
もっと困らば、
何をやめるらむ。
[it-i116] 忘れがたき人人 – 一 (15)
しらなみの寄せて騒げる
函館の大森浜に
思ひしことども
[it-k163] 枕辺の障子あけさせて
枕辺の障子あけさせて、
空を見る癖もつけるかな――
長き病に。
[it-i091] 煙 – 二 (44)
わが庭の白き躑躅を
薄月の夜に
折りゆきしことな忘れそ
[it-k077] この四五年
この四五年、
空を仰ぐといふことが一度もなかりき。
かうもなるものか?