眼を病みて黒き眼鏡をかけし頃
その頃よ
一人泣くをおぼえし
Category Archives: 短歌
[it-i167] 忘れがたき人人 – 一 (66)
腹すこし痛み出でしを
しのびつつ
長路の汽車にのむ煙草かな
[it-i042] 煙 – 一 (42)
そのむかし秀才の名の高かりし
友牢にあり
秋のかぜ吹く
[it-k020] 真夜中の出窓に出でて
真夜中の出窓に出でて、
欄干の霜に
手先を冷やしけるかな。
[it-k123] あたらしきサラドの色の
あたらしきサラドの色の
うれしさに、
箸をとりあげて見は見つれども――
[it-i075] 煙 – 二 (28)
肺を病む
極道地主の総領の
よめとりの日の春の雷かな
[it-k173] 五歳になる子に、何故ともなく
五歳になる子に、何故ともなく、
ソニヤといふ露西亜名をつけて、
呼びてはよろこぶ。
[it-i131] 忘れがたき人人 – 一 (30)
呻噛み
夜汽車の窓に別れたる
別れが今は物足らぬかな
[it-i190] 忘れがたき人人 – 一 (89)
よりそひて
深夜の雪の中に立つ
女の右手のあたたかさかな
[it-i073] 煙 – 二 (26)
その名さへ忘られし頃
飄然とふるさとに来て
咳せし男