そんならば生命が欲しくないのかと、
医者に言はれて、
だまりし心!
Category Archives: 短歌
[it-i209] 忘れがたき人人 – 一 (108)
葡萄色の
古き手帳にのこりたる
かの会合の時と処かな
[it-i073] 煙 – 二 (26)
その名さへ忘られし頃
飄然とふるさとに来て
咳せし男
[it-k004] 咽喉がかわき
咽喉がかわき、
まだ起きてゐる果物屋を探しに行きぬ。
秋の夜ふけに。
[it-i146] 忘れがたき人人 – 一 (45)
椅子をもて我を撃たむと身構へし
かの友の酔ひも
今は醒めつらむ
[it-k055] 家にかへる時間となるを
家にかへる時間となるを、
ただ一つの待つことにして、
今日も働けり。
[it-k052] すっぽりと蒲団をかぶり
すっぽりと蒲団をかぶり、
足をちぢめ、
舌を出してみぬ、誰にともなしに。
[it-i114] 忘れがたき人人 – 一 (13)
ふるさとの
麦のかをりを懐かしむ
女の眉にこころひかれき
[it-i192] 忘れがたき人人 – 一 (91)
芸事も顔も
かれより優れたる
女あしざまに我を言へりとか
[it-k083] 生れたといふ葉書みて
生れたといふ葉書みて、
ひとしきり、
顔をはれやかにしてゐたるかな。