函館の床屋の弟子を
おもひ出でぬ
耳剃らせるがこころよかりし
[it-i104] 忘れがたき人人 – 一 (3)
三度ほど
汽車の窓よりながめたる町の名なども
したしかりけり
[it-i103] 忘れがたき人人 – 一 (2)
たのみつる年の若さを数へみて
指を見つめて
旅がいやになりき
[it-i102] 忘れがたき人人 – 一 (1)
潮かをる北の浜辺の
砂山のかの浜薔薇よ
今年も咲けるや
[it-i101] 煙 – 二 (54)
ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな
[it-i100] 煙 – 二 (53)
ふるさとの停車場路の
川ばたの
胡桃の下に小石拾へり
[it-i099] 煙 – 二 (52)
そのかみの神童の名の
かなしさよ
ふるさとに来て泣くはそのこと
[it-i098] 煙 – 二 (51)
かの家のかの窓にこそ
春の夜を
秀子とともに蛙聴きけれ
[it-i097] 煙 – 二 (50)
見もしらぬ女教師が
そのかみの
わが学舎の窓に立てるかな
[it-i096] 煙 – 二 (49)
ふるさとに入りて先づ心傷むかな
道広くなり
橋もあたらし