真夜中の
倶知安駅に下りゆきし
女の鬢の古き痍あと
Monthly Archives: 12月 1910
[it-i133] 忘れがたき人人 – 一 (32)
雨つよく降る夜の汽車の
たえまなく雫流るる
窓硝子かな
[it-i132] 忘れがたき人人 – 一 (31)
雨に濡れし夜汽車の窓に
映りたる
山間の町のともしびの色
[it-i131] 忘れがたき人人 – 一 (30)
呻噛み
夜汽車の窓に別れたる
別れが今は物足らぬかな
[it-i130] 忘れがたき人人 – 一 (29)
さりげなき高き笑ひが
酒とともに
我が腸に沁みにけらしな
[it-i129] 忘れがたき人人 – 一 (28)
若くして
数人の父となりし友
子なきがごとく酔へばうたひき
[it-i128] 忘れがたき人人 – 一 (27)
かなしめば高く笑ひき
酒をもて
悶を解すといふ年上の友
[it-i127] 忘れがたき人人 – 一 (26)
こころざし得ぬ人人の
あつまりて酒のむ場所が
我が家なりしかな
[it-i126] 忘れがたき人人 – 一 (25)
智慧とその深き慈悲とを
もちあぐみ
為すこともなく友は遊べり
[it-i125] 忘れがたき人人 – 一 (24)
大川の水の面を見るごとに
郁雨よ
君のなやみを思ふ