友はみな或日四方に散り行きぬ
その後八年
名挙げしもなし
Category Archives: 短歌
[it-k122] 胸いたみ
胸いたみ、
春の霙の降る日なり。
薬に噎せて、伏して眼をとづ。
[it-k140] 薬のむことを忘るるを
薬のむことを忘るるを、
それとなく、
たのしみに思ふ長病かな。
[it-i022] 煙 – 一 (22)
神有りと言ひ張る友を
説きふせし
かの路傍の栗の樹の下
[it-i131] 忘れがたき人人 – 一 (30)
呻噛み
夜汽車の窓に別れたる
別れが今は物足らぬかな
[it-i198] 忘れがたき人人 – 一 (97)
火をしたふ虫のごとくに
ともしびの明るき家に
かよひ慣れにき
[it-i124] 忘れがたき人人 – 一 (23)
演習のひまにわざわざ
汽車に乗りて
訪ひ来し友とのめる酒かな
[it-k157] 何思ひけむ
何思ひけむ――
玩具をすてておとなしく、
わが側に来て子の坐りたる。
[it-k028] なつかしき
なつかしき
故郷にかへる思ひあり、
久し振りにて汽車に乗りしに。
[it-k076] 笑ふにも笑はれざりき
笑ふにも笑はれざりき――
長いこと捜したナイフの
手の中にありしに。