いつしかに夏となれりけり。
やみあがりの目にこころよき
雨の明るさ!
Category Archives: 短歌
[it-k166] 放たれし女のごとく
放たれし女のごとく、
わが妻の振舞ふ日なり。
ダリヤを見入る。
[it-i093] 煙 – 二 (46)
霧ふかき好摩の原の
停車場の
朝の虫こそすずろなりけれ
[it-i081] 煙 – 二 (34)
年ごとに肺病やみの殖えてゆく
村に迎へし
若き医者かな
[it-i232] 忘れがたき人人 – 二 (20)
わかれ来て年を重ねて
年ごとに恋しくなれる
君にしあるかな
[it-k103] 思ふこと盗みきかるる如くにて
思ふこと盗みきかるる如くにて、
つと胸を引きぬ――
聴診器より。
[it-i133] 忘れがたき人人 – 一 (32)
雨つよく降る夜の汽車の
たえまなく雫流るる
窓硝子かな
[it-i014] 煙 – 一 (14)
城址の
石に腰掛け
禁制の木の実をひとり味ひしこと
[it-i020] 煙 – 一 (20)
ストライキ思ひ出でても
今は早や吾が血躍らず
ひそかに淋し
[it-k045] 青塗の瀬戸の火鉢によりかかり
青塗の瀬戸の火鉢によりかかり、
眼閉ぢ、眼を開け、
時を惜めり。