眼を病みて黒き眼鏡をかけし頃
その頃よ
一人泣くをおぼえし
Category Archives: 短歌
[it-k146] 月に三十円もあれば、田舎にては
月に三十円もあれば、田舎にては、
楽に暮せると――
ひょっと思へる。
[it-i233] 忘れがたき人人 – 二 (21)
石狩の都の外の
君が家
林檎の花の散りてやあらむ
[it-k166] 放たれし女のごとく
放たれし女のごとく、
わが妻の振舞ふ日なり。
ダリヤを見入る。
[it-k049] ぢっとして
ぢっとして、
蜜柑のつゆに染まりたる爪を見つむる
心もとなさ!
[it-k161] あの年のゆく春のころ
あの年のゆく春のころ、
眼をやみてかけし黒眼鏡――
こはしやしにけむ。
[it-i165] 忘れがたき人人 – 一 (64)
忘れ来し煙草を思ふ
ゆけどゆけど
山なほ遠き雪の野の汽車
[it-i129] 忘れがたき人人 – 一 (28)
若くして
数人の父となりし友
子なきがごとく酔へばうたひき
[it-i225] 忘れがたき人人 – 二 (13)
病むと聞き
癒えしと聞きて
四百里のこなたに我はうつつなかりし
[it-i063] 煙 – 二 (16)
石をもて追はるるごとく
ふるさとを出でしかなしみ
消ゆる時なし